『天は赤い河のほとり』のユーリ・イシュタルは架空の人物ですが。彼女の設定には史実のヒッタイト王妃を思わせる要素がいくつかあります。
子どもや皇太后との関係が重なるガッシュルウィヤと、女神イシュタルとの結びつきや外交での活躍が近いプドゥヘパです。
この記事では、二人の王妃とユーリの共通点や違いを詳しく紹介します。
この記事で分かること
- ユーリとガッシュルウィヤに共通する家族構成
- 皇太后との対立した王妃としての共通点
- ユーリとプドゥヘパに共通する宗教・外交面での活躍
- 夫の死後も生きたプドゥヘパとユーリの違い
ユーリのモデル候補となった二人の王妃
ユーリ・イシュタルのプロフィール・家族構成
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名前:鈴木夕梨(ユーリ・イシュタル)
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立場:初登場時は中学生。運動が得意。現代日本から古代ヒッタイトに召喚され。皇妃ナキアによって生贄にされそうになりますが。カイル王子に守られの側室になり、のちに大王カイルの正妃(タワナアンナ)となります。
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家族構成
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父:名前不明
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母:名前不明
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姉:鈴木毬絵(すずき まりえ)
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妹:鈴木詠美(すずき えいみ)
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夫:カイル・ムルシリ(ムルシリ2世)
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子どもたち:ムワタリ2世、ハットゥシリ3世、ハルパスルピ、マッサナウッツィ(後日談より)
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ユーリ係は劇中でムルシリ2世の妃になります。史実ではムルシリ2世の妃はガッシュルウィヤにとてもよく似ています。作品の後日談を見ると、ユーリはカイルとの間に子どもを授かり、次の代の王となるムワタリ2世やハットゥシリ3世たちの母になりました。史実のガッシュルウィヤもムルシリ2世の妻で、まったく同じ子どもたちの母だったと考えられているのですね。
ところがユーリの女神イシュタルと深く結びつき、夫を助けて外交や宗教で活躍するという王妃としての活動になるとプドゥヘパの方が近いのです。プドゥヘパは実際にイシュタル(シャウシュカ)に仕えた神官で、ヒッタイトの大王妃としてエジプトとの外交などで大きな力を発揮しました。
カイルの妻となって子どもを生む立場はガッシュルウィヤから、女神との関係や強力な王妃としての活躍ぶりはプドゥヘパから取り入れられたのかもしれませんね。
家族関係と宮廷での対立は「ガッシュルウィヤ」がモデル?
史実のムルシリ2世の妃はガッシュルウィヤ
ガッシュルウィヤは、カイルのモデルになったムルシリ2世の妻だった人です。
ムルシリ2世との間には長男のムワタリ2世、次男のハットゥシリ3世、ハルパスルピ、王女マッサナウッツィらが生まれたとされています。
長男のムワタリ2世は父の後を継いで王となり、エジプトの有名なわがまま王(?)ラムセス2世と「カデシュの戦い」を繰り広げました。
また弟のハットゥシリ3世も後に王位に就きプドゥヘパを妻に迎えています。ガッシュルウィヤはヒッタイト帝国の後半を支える王家の母だったわけですね。
ユーリも外伝ではムワタリ2世たちの母になるので劇中ではガッシュルウィヤの立場にいるのです。
夫の継母から命を狙われた
ガッシュルウィヤとユーリには「夫の継母と対立した」という共通点があります。
ムルシリ2世が王になった当時、父シュッピルリウマ1世の妻だった皇太后(タワナアンナ) マルニガルがまだ存命でした。マルニガルはムルシリ2世の実の母親ではなく、バビロニアの王家から嫁いできた継母だったと考えられています。
あるときガッシュルウィヤが病にかかると、ムルシリ2世は神々に妻の平癒を必死に祈りました。しかし願いもむなしくガッシュルウィヤは亡くなってしまったのです。
悲しむムルシリ2世は、「継母マルニガルが呪術を使って妻を死なせた」と訴えました。それだけでなく彼女が王宮の財産を自分の味方に与え、王家に害を及ぼしたとも主張したのです。
ムルシリ2世は彼女を殺しはしなかったものの、王宮から追放して王族としての権限を奪いました。
このエピソードは作中でユーリが皇太后ナキアから何度も命を狙われる展開とそっくりですよね!作中のナキアもバビロニア出身で、自分の息子ジュダを王にするためにカイルやユーリを排除しようと暗躍。夫のシュッピルリウマ1世の死後は皇太后になります。
ただし本当に継母が呪術でガッシュルウィヤを殺したのかどうかは、現代の私たちにはわかりません。残っている記録はあくまでムルシリ2世側が訴えた文面だからです。継母側の言い分を伝える史料が残っていないため、真相は歴史の闇の中ということになりますね。
ガッシュルウィヤは「タワナアンナ」になれたのか
ヒッタイトの「タワナアンナ」という称号は単に「王妃」という意味ではありませんでした。先代の王が亡くなった後も、その女性が生きていればタワナアンナの地位にいたからです。
そのため先代のタワナアンナが生きている間は、王妃でもタワナアンナにはすぐになれませんでした。
ムルシリ2世の時代にはマルニガルがタワナアンナの地位にいたため、ガッシュルウィヤが生きている間に正式なタワナアンナになれたかどうかは不明です。
ガッシュルウィヤとユーリの違い
タイムスリップしたという設定はおいといて。ヒッタイト世界で生きるユーリ・イシュタルとガッシュルウィヤの違いはどうでしょうか?
劇中のユーリはナキアを失脚させた後に正式なタワナアンナになります。なのでタワナアンナにはなれなかったガッシュルウィヤとは違います。
そして一番大きな違いは、ガッシュルウィヤはムルシリ2世が即位して9年目に亡くなっている点です。ユーリはムルシリ2世が亡くなる前年まで生きている設定です。
ユーリはカイル・ムルシリと行動を共にして積極的に動きますが、ガッシュルウィヤがそこまで行動的だったという記録はありません。
大王妃としての精力的な活動という点では、次にご紹介するプドゥヘパの方が近いです。
王妃としての圧倒的な活躍は「プドゥヘパ」がモデル?
もう一人のモデル候補といえるのがプドゥヘパで。
プドゥヘパはムルシリ2世の妻ではなく、その息子ハットゥシリ3世の妻です。つまり、ガッシュルウィヤやユーリの息子の妻になる人です。
でも彼女の経歴や人物像はユーリの活躍にとてもよく似ているのです。
プドゥヘパはキズワトナ地方のラワザンティヤという街で生まれました。父親のベンテプシャリは街で祀られていた女神シャウシュカの神官でした。このシャウシュカという女神は、メソポタミアの「イシュタル」と同一視される存在でした。
プドゥヘパ自身もシャウシュカ(イシュタル)に仕える神官となり、ハットゥシリ3世が残した記録(『弁明書』)によれば、二人の結婚には女神の導きがあったと語られています。
作品のユーリも民衆から「戦いの女神イシュタルの化身」と称えられています。女神イシュタルに愛され、王となる男性を支えていくヒロインの姿はプドゥヘパと似ています。
外交の表舞台に立った大王妃
プドゥヘパは夫が王になると最高位の王妃(タワナアンナ)になり。宗教儀礼だけでなく、政治や外交にも深く関わりました。
彼女は自分専用の印章を持ち裁判や王宮の管理にも参加しています。
さらに、あのエジプト王ラムセス2世やその王妃ネフェルタリと直接手紙をやり取りして国家間の和平や王族同士の結婚について交渉を行っていたのです。
カイルを支えて国を動かしていったユーリの頼もしい姿はプドゥヘパの政治的・外交的な活躍を思わせますね。
戦士としてのユーリは作品オリジナルの要素
でも史実のプドゥヘパがユーリのように剣を振るって軍の総司令官として戦場に立ったという記録はありません。
史料に出てくるプドゥヘパの活動は神々への祈り、儀式、裁判、手紙による外交、王宮の管理などです。いくら権力があったといっても、実際に軍を率いて戦ったわけではありません。
ユーリが見せる見事な剣術や馬術、近衛長官や総司令官としての格好良い姿は、漫画として物語を盛り上げるためのオリジナル設定です。
プドゥヘパが持っていた宗教的・政治的な力を少女漫画の主人公としてドラマチックに演出させたのかもしれませんね。
プドゥヘパと女神ヘパト
ちなみに「プドゥヘパ」という名前には女神ヘパトの名が含まれています。直訳すると「ヘパトの召使い」といった意味合いになるといわれます。古代の人名解釈にはいろいろな説があるため、確実とは言えませんが。そのような解釈もあるということです。
プドゥヘパはヘパトを自分ゆかりの女神として熱心に信仰していました。彼女は祈りの文章の中で、ヒッタイトの最高の神である「アリンナの太陽女神」と自分の女神「ヘパト」を同等に扱い自分が長く女神に仕えてきたことを誇り高く語っています。
ユーリ・イシュタルも女神イシュタルに守られ、その威光を地上で表す存在として民衆に愛され。イシュタルの役を演じています。ユーリ・イシュタルと名前に神の名をつけて呼ばれることもあります。
夫の死後も権力を保ち続けたプドゥヘパ
プドゥヘパとユーリには、夫が違うという以外にも大きな違いがあります。
プドゥヘパは夫のハットゥシリ3世が亡くなった後も長生きし、息子のトゥドハリヤ4世が王になった後もタワナアンナの地位にとどまり続けました。夫の死後も「王の母」として裁判や宗教に大きな影響力を持ち続けたのです。
一方のユーリはカイル・ムルシリ2世が亡くなる1年前に他界した設定です。息子の治世まで生きて権力を持つことはありませんでした。
まとめ:二人のヒロイン像が組み合わさった魅力的な主人公
ユーリ・イシュタルは架空の主人公ですが、設定には古代ヒッタイトに実在した二人の女性の影が見え隠れしています。
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ガッシュルウィヤ:カイル(ムルシリ2世)の妻となり、次の代の王たちの母となった家族関係。そして夫の継母(タワナアンナ)から命を狙われた宮廷での出来事。
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プドゥヘパ:女神イシュタル(シャウシュカ)と強い繋がりを持ち、夫を支えながら宗教や政治、外交で圧倒的な存在感を示した大王妃としての活動。
この二人の史実が組み合わって「ユーリ・イシュタル」が誕生したのかもしれませんね。


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