セミズ・アリ・パシャはオスマン帝国の大宰相です。
スレイマン1世時代の他の大宰相と同じようにデヴシルメで徴用されました。イスタンブールの学校を卒業後、軍人になって功績を重ね。地方の知事をへて最小になりました。
軍を率いる一方で和平交渉などでも活躍しています。
リュステム・パシャの死後に大宰相になりました。
その後、亡くなるまでの3年あまりの間。大宰相を務めました。
セミズ・アリ・パシャは背が高くて太っていました。機知に富み社交的で冗談好きの人物でした。彼の評判はイスタンブール高官や人々の間でも口コミで伝わり。彼をネタにした笑い話も伝わっています。笑い話の内容の真偽はともかく、そういうキャラとして知られていたようです。
トルコドラマ「オスマン帝国外伝・シーズン4」でも登場。史実通りリュステムのあと大宰相になります。ドラマではバヤジトを支持する人物として描かれていますが。史実でははっきりとバヤジトを支持していたかどうかはわかりません。
セミズ・アリ・パシャについて紹介します。
セミズ・アリ・パシャの史実
通称:セミズ・アリ・パシャ(Semiz Ali Paşa)
地位:オスマン帝国大宰相
出身地:ヘツツェゴビナ
生年:不明
没年:1565年
父:ヒュセイン
母:不明
セミズ・アリ・パシャは、 ヘルツェゴビナの町のヒュセインという陶芸家の息子です。
1520年代にデヴシルメでイスタンブールに連れて来られエンデラン(国立学校)で学びました。彼の親戚チェシュテ・バリはパルガル・イブラヒム・パシャのもとで働いていました。チェシュテ・バリの助けを借りて宮殿に入りました。
セミズ・アリ・パシャは体格が大きく、太く、背が高いため、「Semiz」、「Semin」、「Bold」などのあだ名が付けられました。
1545年。軍の士官(mir-i alem)になりました。
1546年。イェニチェリ(歩兵常備軍)の長官(Yeniçeri ağası)になりました。
その後、ルメリアの知事になりました。
1549年。エジプトの知事になりました。
1553年。第三宰相になりました。
1552~1554年の間に オスマン・サファヴィー戦争が起こりました。軍の指揮官として参戦しました。その後、終戦時の和平交渉を担当。
1555年。第二宰相になりました。
1561年。ダマット・リュステム・パシャが死亡。セミズ・アリ・パシャは大宰相に任命されました。
リュステムの死後に大宰相になる
1565年6月28日に亡くなるまで3年11か月の間、大宰相を務めました。
オーストリアとの和平
セミズ・アリ・パシャはヨーロッパ方面の平和を保つためオーストリアとの良好な関係を維持しようとしました。リュステム・パシャが大宰相の時代はオーストリア大使は監視され、様々な制限がつけられていました。セミズ・アリ・パシャが大宰相になるとオーストリア大使への監視や制限をを緩めました。
イスタンブールの中心部でペストが流行したときには、オーストリア大使のブスベックに安全なブユカダに移動してそこに住むことを許可しました。
セミズ・アリ・パシャはこうしてオーストリア大使のブスベックに誠意をもって対応して交渉をすすめました。そして1562年から8年間の平和条約を調印しました。
洪水対策
1563年9月20日。スタンブール史上最大の洪水災害がおこりました。イスタンブールに大雨が続き、ハルカリ川が氾濫。市内が水没。多くの人が洪水、倒木、倒壊した家屋で亡くなりました。
ベオグラードからイスタンブールに水を運ぶ水路は完全に砂で覆われてしまい、イスタンブールへの上水道が止まってしまいました。
皇帝スレイマン1世はこの洪水のとき間、狩りをするためにイェシルキョイにいました。彼が避難した邸宅も浸水しました。スレイマン1世は現地の役人に救出されましたが。
大宰相のセミズ・アリ・パシャと州の高官はスレイマン1世とともに破壊された水道橋を訪れました。スレイマン1世はすぐに損傷した橋、道路、水路、水道橋の復旧を命じました。
工事は建築主任のミマール・スィナンが担当しました。さらに、カウタネ(Kağıthane)の水をイスタンブールにひくことが決定されました。
マルタ島作戦
このころマルタ島のマルタ騎士団は地中海を旅するイスラム教徒やユダヤ教徒の巡礼者、商人、乗客を攻撃、略奪していました。
1565年。そこでオスマン帝国はマルタ島を征服してマルタ騎士団を排除することにしました。
セミズ・アリ・パシャは大宰相としての任務を続けながら、1565年6月28日に亡くなりました。
次の大宰相にはソコルル・メフメト・パシャが任命されました。
マルタ島作戦はスペインがマルタ騎士団に味方したこと、スレイマン1世の死によって軍が退却したことで成功しませんでした。
したがってセミズ・アリ・パシャはマルタ島攻略失敗の結果を知る前にこの世を去っています。
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